2025年8月版
国内民需は引き続き緩やかに回復、輸出の立ち直りもあって4〜6月期は再びプラス成長へ

【4〜6月期は再び緩やかな回復へ】
 トランプ関税前の駆け込み輸出の反動で減少していた輸出が6月から緩やかな上昇に転じ、設備投資を中心に国内民需も増加を続け、景気は1〜3月期足踏みのあと再び緩やかに上昇している。4〜6月期の「景気動向一致指数」は小幅に上昇し、「同先行指数」は、5、6月と2か月連続して上昇した。7月の「け気ウォッチャー調査」の「現状判断DI」は3か月連続して上昇し、「先行き判断DI」も4か月続けて上昇している。
 1〜3月期に微減した鉱工業生産は、4〜6月期に小幅上昇した。4〜6月期の生産、出荷の増加を支えたのは主として内需である。輸出はトランプ関税前の駆け込みの反動で3月から減少していたが、6月からは緩やかな増加に転じている。この間輸入はエネルギー資源の価格低下を中心に減少を続けているので、4〜6月期の「純輸出」は増加したと見られる。

【鉱工業生産と出荷は内需を中心に立ち直り】
 6月の鉱工業生産は、前月比+1.7%と3か月振りに増加し(図表1)、4〜6月期の平均も前期比+0.3%の増加となった。これで1〜3月期の生産の前期比−0.3%減少は帳消しとなり、本年上期の生産は大勢横這いとなった。製造工業生産予測調査によると、7月は前月比+1.8%、8月は同+0.8%と3か月続伸する予想となっている。6〜8月の生産続伸を主導する見込みの業種は、電子部品・デバイス工業である。
 6月の鉱工業出荷は、前月大きく増加(5月の前月比+2.4%)した反動もあって、前月比−0.8%の減少となった。しかし4〜6月期全体としては、前期比+1.2%と3四半期振りの拡大となった(図表1)。これは国内向け出荷が、前期比+2.1%の増加となったためである。鉱工業輸出は1〜3月期にトランプ関税前の駆け込みで前期比+9.8%と大幅に増加した反動で、4〜6月期は前期比−3.6%の減少となった。

【個人消費は緩やかな増勢を持続】
 国内需要の動向を見ると、6月の「家計調査」の実質消費支出(季調済み)は、前月比−5.2%と前月増加(同+4.6%)のあと減少となったが、4〜6月平均の1〜3月平均比は、+0.7%の増加であった。他方、6月の「実質消費活動指数」(日銀推計)は、前月比+0.6%の増加となった(図表2)。また7月調査「消費動向調査」の「消費者態度指数」は、5〜6月に大きく上昇(通計+10.6%)したあと、7月は前月比−0.8%とやや低下した。
 当面の個人消費は、堅調な雇用に支えられ、消費者物価高騰(6月の前月比+3.4%、図表2)の下で、緩やかな増勢となっている。実質賃金は6月も−1.3%と6か月連続して前年を下回っているが(図表2)、雇用は底固い動きを続けている。

【設備投資の堅調続く】
 機械投資の動向を反映する6月の資本財(除輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前月比+7.5%とやや大きく増加した(図表2)。
 各種の25年度設備投資計画が、合理化投資を中心に前年比2桁の伸びとなっていることから判断しても、本年度の設備投資は当面底固く推移していると見られるが、この先トランプ関税の影響で世界景気がどの程度鈍化し、日本企業の設備投資態度にどう響いてくるか、注目される。

【輸出は6月から反転増加、4〜6月期の外需は成長にプラス寄与】
 最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」(季調済み、以下同じ)は、6月に70億円の赤字と赤字幅を大きく縮小した(図表2)。これは6月の貿易収支が、輸出の増加から1249億円の黒字に転じたためである。
 今年に入ってからの輸出動向を見ると、トランプ関税前の駆け込み輸出から2月の輸出が大きく増加したあと、その反動で3〜5月の輸出は毎月減少してきたが、6月にようやく反転増加した。他方輸入は、石油・石炭などのエネルギー関係が、国際市況の値下がりもあって減少を続けているため、貿易収支の赤字は縮小傾向を示し、本年の2月に続き、6月は若干の黒字となった。
 近く公表される4〜6月期のGDP統計では、「純輸出」が成長に貢献する形となろう。国内需要は、設備投資、個人消費など民需が底固く推移しているため、全体としてプラス成長となる公算が高い。